なつかしの昭和の子どもたち

龍ヶ崎市に在住のカメラマンの佐藤有氏(1937年生)が、昭和30年代前半に撮った龍ヶ崎の子どもたちのスナップ写真を1冊にまとめた写真集です。子供たちへの視線の温かさが伝わってくるのは写真家の気持ちの表れでしょう。龍ヶ崎という地方都市を題材にしていますが、それらの作品は貴重なものばかりでした。物言わぬ写真ですが、撮られた時の状況を見事に伝えるものでした。やはり懐かしい気分に包まれます。昭和30年代の龍ヶ崎市ののどかな田園風景が伝わってきました。土の匂いが感じられるものばかりで、戦前の風景も色濃く残っています。無邪気で警戒心のない素晴らしい子供たちの笑顔に囲まれているような写真集でした。平成の世も終わり令和になり、少しずつ昭和が遠くなっていくのは、昭和という時代を半分以上生きた者にとって何かしら惜別の情を感じます。子供たちを中心としていますが、市井の人々の日常も少し登場し、昭和30年代の懐かしい風景が切り撮られていました。校庭での遊びの一シーンもそうですが、肖像権もあり、今では子供の表情を撮るのが難しい時代になっています。笑顔を見るとホッとしますし、癒されました。あの時代を語るような懐かしさと健やかで伸びやかな子どもたちの情緒も得られるようになっています。子供達を撮っているわけですが、知られざる激動の昭和の語り部のような風合いも感じられることでしょう。見事なルポルタージュ・フォトは文化史や風俗史の観点から見ても貴重な写真群だと思いました。子供達の表情からは、現在とは全く違う往時の日本の姿を顧みたような気がします。28ページ以降に掲載してある「なつかしの子ども遊び」は、昭和を感じさせる街並みを背景にして、子供たちがチャンバラに興じている瞬間を切り取っていました。無邪気で警戒心のない素晴らしい子供たちの笑顔から躍動感が伝わってくるようでした。知られざる昭和のこどもたちの語り部のような風合いすら伝わってきました。