異端者の快楽 (幻冬舎文庫)

一度もつれた糸をほぐすのは大変。Twitterだけでは双方の本心が伝わらず誤解を生む。律儀な性格の氏は755もTwitterでも相手の言葉に応えようと思って、多忙な時間を削って返信するが、好きでやっているならストレスは感じないだろうけど、そうではないと思う。しかも、対面で表情や声を聴くコミュニケーションと違い、Twitterでの単調な会話文では、微妙なニュアンスが伝わらないし、言葉を誤解して致命的な大喧嘩に発展することもある。おまけに、Twitterを読んだ大勢の外野が便乗して、方々から火炎瓶を投げ込むように汚い言葉を投げ大炎上になり、下手をすると焼き殺されてしまう。高須克弥氏や堀江貴文氏のように「大炎上」を覚悟で最後まで闘う手もあるけどね。見城氏は幻冬舎の社長として、他の重要なことに猛進する生き方の方がお似合いだ。だから、今回は見城氏の「やめます宣言」は大正解、しばらくネットは見ない方が良い。私は今回の件で、不眠症気味の氏が益々眠れなくなって、うつ的気分になっていないか心配。でも、実際、もの凄く辛いよね～凹むよね。「元気を出してください」なんて言えないわ。以下は本著のレビュー【見城氏は正真正銘の変態マゾ男！出版に命を懸けて獲物を追う永遠の異端児！】本著の強烈な文面に目玉が飛び出しそうになった一部を紹介したい。「僕はある特殊なタイプの女性に激しく反応するのだ。髪の毛から醸し出す雰囲気まで、何もかもが濃くて、はっきりしていて、強さを感じる女性。大人の性的な興奮と同じ感覚を四、五歳ではっきりと持っていた。小さなペニスが勃起するのがわかった。精神医学では、どんな説明があるか知らないが、僕はその頃から自慰を知っていた。」以上の文に見城氏が幼児の頃の性的原体験を本文で暴露したことに驚き、本を書くってことは、内なる全てを公にさらけ出すことなのか、凡人にはそんな勇気は持てないと思った。異端者の見城氏は女性の好みも極端に狭いストライクゾーンに入る、「他人とは全然タイプが違う」と言いながら、高校3年生の時の恋は学校中のマドンナだったという矛盾はなんだ。「憧れのマドンナを射止めたことを、めっちゃ自慢してるやん。」とツッコミを入れたくなった。その後、私は最後のページまで見城氏に引きずり込まれないように、自分の湧き出る感情は押し殺して、「冷静に客観的な傍観者として読もう」と考えた。見城氏は言葉の魔力で、読者の心臓をえぐりながら迫ってくる要注意人物だからね。異端児は成長しても死ぬまで異端の先端を突っ走って行く人だということが分かった。「本を売るための演出も素晴らしい、本著の表紙の写真もカッコ良すぎるやん、まるで異端児そのものやん～。」と見城氏の商売の才能にも勲章を差し上げたい。氏の煮えたぎるような熱さは、死ぬまで続くのだろうね。氏自身も熱いものが好きだ。自分と同じ極端な人間を求めて本を出版する。「平凡などつまらない！人も人生も熱くあるべきだ」と思っているのだ。だから、冷めて面白みのない人間には興味がない。だけど、私も含めて見城氏の本を買ってまで読む人は、自分で「普通」と思っているが、実は極端を密かに隠し持っていたり、持っていることさえも気づかないのかも知れない。結局、究極の異端者は独りの表現者として正直に生き、自己を臆面もなく吐き出せる人だ。「恥ずかしい、カッコ悪い、人から変な人に思われるのは嫌だ～。」なんて考えない。ストリーキングのように真っ裸で走り、人に笑われても見せたい、どんなに馬鹿にされても、自分を見て欲しい、自意識過剰で自己顕示欲が異常に強く、大衆にいじられても踏みつけて欲しいという気持ちが勝つ、言わば、マゾヒズムに近い変態人間だと思う。氏は出版という仕事そのものが、異端者という変人の限りない欲求が満たされる唯一のものであり、永遠に、同期する異端者という獲物を追うことで自己を満足させている。出版は見城氏にとって、天性の仕事だと思う。獲物を射止めて、まだ息をしている胴体から、ほとばしる生臭い血肉を食らう官能的快楽を氏は死ぬまで続けるのだ。そして、「異端者もどきの読者」は、異端者の書いた本を読むことで、他者が仕留めた最高の肉の断片を口にして、恍惚感にうっとりし、時に、涙を流し、自分の中に眠っている野生の本能に驚愕しながらも、そんなはずはないと自己否定したいわけだ。見城氏は出版社の代表取締役として、異端の少数派に向けて、商売を成立させるという両極端の矛盾と闘い、大衆に喜ばれ面白いと認められる作品を出版し続けなければならない。「売れる本」を創り出すために注いだエネルギー量の大きさ、売るために夜を徹して考え抜いて不眠症が日常的な病気みたいになって、見城氏は鉄の臭いのする疲労しきった血の吐くような努力を延々と68歳まで続けたのだ。なんと、奇才で恐ろしい男なんだ。こういう爆弾男は苦手だ、願い下げだ、でも、本は面白いので数時間は付き合える、だけど、何時間も継続して付き合うのは辛いので、私は漫画とか省エネで足りる軽い本を読んで大爆笑しようじゃないかと思った、抵抗しなきゃ突風に巻き込まれて吹き飛ばされるからね。大体、私は見城氏のような男はタイプじゃない、疲れる、癒されないのだ。そう思ってみても、軽い本だけでは馬鹿になる。社長の見城氏から学べることは多い。どんな職業でも狂うほど熱中して努力すれば、その注ぎ込んだエネルギーに見合うだけの収入や貴重な経験ができ、最後は自分だけの大輪の花が咲かせることが可能だと本著を読んで希望が持てる。それがあるから、見城氏の書く本は読む価値が高いのだ。ある意味、見城氏が羨ましい。本能のままに生きる動物だと自覚して、とことん野生児のように本能のままに好きな仕事に没頭できて、成功を手にしたのだから氏は幸福な人生を今も突き進んみ、痛い、苦しいと呻きながらも、死ぬまで走り続けるのだから、「やっぱり、この男は正真正銘の変態マゾだ！」と私は本著で確信した。容貌は強面でいかついけど、内面は繊細でガラス細工のような男なのかも知れない。もう十分長文になってしまったけど、最後に対談の一部をご紹介したい。内館牧子氏との対談で、内館氏が「年齢と地位は、どうしても自分を楽な方向に行かせるね。」の言葉に、見城氏が「そうなりつつある自分に気づき始めて、もう一回やり直さなきゃいけない…中略、「角川書店」という看板から一回離れなきゃと思った。」「運もありますけど、ハッキリ言って僕は努力していますよ。本当に努力はしている。」内館氏が、「努力も含めて、『ああ、僕は角川にいた頃とは違う生きる喜びを感じるな』と思うときはありますか？」の質問に、見城氏が「それはないですね。僕はいつも寂しくて、切ないから。」と返答している。私は「ええ、なになに、なんで、どうして寂しいの？成功者なのに～。」と思った。見城氏の切なさとは、限りある生命の儚さを想ってのことなのだろうか。きっとそうだ。氏は常に死を意識して生を精一杯に生き抜いているのも、死の間際に「まあいい人生だった」と微笑みたいからだと言う。その気持ち、分かる。自分は不幸だったとか、世間に恨み節を吐いて死ぬのは嫌だ。私も見城氏の「努力」を見習って、後半の貴重な人生を後悔のないように頑張ろうと思う。本著を読むことで、熱いエネルギーを少し分けてもらって、好感度、満足感度が急上昇した。見城徹氏のことを知りたい人、他、ここに登場する筋金入りの異端者たちに興味がある方は、この本を手にした自分自身にも異端の要素が隠れていることを知ってください。自分はマジョリティーだと思っている人、自分の心の中が見えて面白い発見がありますよ。4月13日追記私は読書の後に、異端者の見城徹氏と堀江貴文氏の違いを分析して楽しんだ。堀江氏はまだ、発芽していない種、そう、どこの馬の骨とも分らぬ種を沢山集めて、氏の経験と知識を総動員して、「名もない多種多様で個性的な種」に水と栄養を与え、大輪の花を咲かせて、日本社会の発展に社会貢献しようと頑張っている。見城氏の場合は、既に発芽していたり、若葉が成長しつつあったり、既に有名になって、マドンナのように高根の花になっている者を対象に、命懸けで追いかけて、炎で煮えたぎった矢を、獲物めがけて放ち射止めて、耽美な血肉に食らいついて官能的に満足する。そして、射止めたその艶やかな獲物である「絵画」を、編集という形で飾りたて、引き立たせる「豪華な額縁」、その額縁の役目を入念に施し、出版という形で、公範囲に世に広めて、送り出す。その繰り返しを経営者としてやってきた。これも、素晴らしい事だと思う。見城氏は出版社の社長として、「売る」という使命のために命を懸けている。出版社は作品にぴったり合う「額縁」で飾り立てて、「絵画」をより輝かしく見せる「額縁屋」なのだ。